PC1台、スマホ1台、さらにタブレットも。複数デバイスで同じ Clash 設定を維持する方法は1つではありません。本記事ではサブスクリプション一括配信、WebDAV によるバックアップ・復元、手動での書き出し・読み込みという3つの方法を整理し、それぞれ何を同期対象とするか、どこまで自動化できるか、どんな場面に向いているかを解説します。
同期の前に:設定を2つのレイヤーに分けて考える
複数デバイスで同じ設定を維持する際、最初にやるべきはツール選びではなく、設定が2つのレイヤーに分かれていると理解することです。
- レイヤー1:サブスクリプションとルール。ノード一覧、プロキシルール、ポリシーグループの定義で、サブスクリプションファイルとローカルの上書き設定から成ります。これが同期の対象です。
- レイヤー2:クライアント側のローカル設定。システムプロキシのオン/オフ、自動起動、TUN モード、ポート番号、ログレベルなど、そのデバイス固有の状態です。ここは同期不要です。
ポートが典型例です。PC の 7897 番ミックスポートはスマホには関係なく、TUN モードはデスクトップ向け機能で、Android では対応するシステム VPN サービスを使います。レイヤー2まで無理に揃えようとすると、むしろ設定の衝突を生みます。つまり同期のゴールは明確です。レイヤー1は一致させ、レイヤー2は各デバイスに任せる。
方法1:サブスクリプション一括配信
仕組みは一言で言うと、全デバイスで同じサブスクリプションURLを登録し、ノードとルールの更新はサブスク配信側に任せ、デバイス側は定期的に取得するだけという方式です。
操作は3ステップ:
- 各デバイスのクライアントで新規設定を作成し、同じサブスクリプションURLを貼り付けます。
- 自動更新をオンにし、間隔は24時間程度に設定します。
- 以降はノードの増減やアドレス変更をサブスク配信側で発行するだけで、各デバイスが自動的に追従するため、1台ずつ操作する必要はありません。
自分用のカスタムルールを反映させる方法は2つあります。
方法A:サブスク側でマージ。subconverter などのサブスクリプション変換ツール(オンラインサービスでも可)を使い、変換テンプレートに個人ルールを組み込みます。すると各デバイスが取得するサブスクリプション自体にそのルールが含まれるようになります。1箇所を直せば全デバイスに反映されるので、台数が増えても安心です。
方法B:クライアント側で上書き。Clash Verge Rev の「グローバル拡張設定」は Merge 記法に対応しており、サブスクリプションのルールより前にルールを挿入できます:
prepend-rules:
- DOMAIN-SUFFIX,internal.example.com,DIRECT
- IP-CIDR,192.168.31.0/24,DIRECT,no-resolve
注意:この上書き設定はローカルに保存されるため、デバイスを変えるたびに再設定が必要です。ルールやデバイスの数が多い場合は、サブスク側でのマージを優先してください。
評価。メリット:ノードは常に最新で、日常的なメンテナンス負担はほぼゼロ。デメリット:サブスクリプションURLの有効性に依存するため、URLが失効すると全デバイスが同時に影響を受ける。個人用ルールをクライアント側で上書きする場合は、依然として1台ずつの管理が必要。
方法2:WebDAV によるバックアップと復元
Clash Verge Rev には WebDAV バックアップ機能が内蔵されており、「設定 → バックアップ」から利用できます。WebDAV サーバーのアドレス、ユーザー名、パスワードを入力するだけで使えます。NutStore(坚果云)、Nextcloud、Synology NAS の WebDAV パッケージ、あるいは標準的な WebDAV サーバーであれば何でも利用可能です。
作業の流れ:
- デバイスA:バックアップページで新規バックアップを作成。設定、サブスクリプションの参照情報、上書き設定がまとめてアップロードされます。
- デバイスB:同じ WebDAV アカウントを設定すると、バックアップ一覧にデバイスAがアップロードしたデータが表示されます。
- デバイスB:そのバックアップを選んで復元を実行すれば、設定の移行が完了します。
モデルを正しく理解しましょう:これは「バックアップと復元」であり、リアルタイムの双方向同期ではありません。デバイスAで設定を変更しても、デバイスBには自動反映されず、再度バックアップと復元を行う必要があります。まとめて移行する用途には強いですが、日常的な設定の一致には向きません。
向いている場面:PCの買い替え、OSの再インストール、新しいデバイスへの初回導入。定期的にバックアップを取っておけば、設定の遠隔地保管にもなり、ローカル設定が壊れた際の復旧手段にもなります。
アカウントのセキュリティに関する注意
バックアップデータにはサブスクリプションURLやノードの認証情報が含まれます。WebDAV アカウントには強固なパスワードを設定し、バックアップ専用のアカウントやアプリパスワードを用意して、メインで使っているオンラインストレージとは分けることをおすすめします。
方法3:手動での書き出しと読み込み
最も原始的で、しかし最も確実な方法です。オンラインサービスに依存せず、設定ファイルをあるデバイスから別のデバイスへ直接移動します。
書き出し。Clash Verge Rev の「設定」ページで対象の設定を右クリックし、ファイルを編集またはファイルの場所を開く操作から yaml の内容を取得できます。設定画面から設定ディレクトリを開き、設定フォルダ全体をコピーする方法もあります。
転送。USBメモリ、LAN 共有、チャットアプリのファイル送信機能などが使えます。ファイルにはノードのアドレスや認証情報が含まれるため、信頼できる手段でのみやり取りしてください。
読み込み。新しいデバイスでは「設定」ページの新規作成または読み込み機能から yaml ファイルを選択するだけです。サブスクリプション型の設定であれば、サブスクリプションURLを直接貼り付けて再構築する方が簡単で、効果は同じです。
向いている場面:一度きりの移行、機種変更、家族や同僚に同じ設定を渡す場合。複数デバイスで長期的に設定を一致させ続けるには不向きで、変更のたびに書き出し・転送・読み込みをやり直す必要があります。
3つの方法の比較と選び方
| 方法 | 同期対象 | 自動化の度合い | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| サブスクリプション一括配信 | ノード、ルール(サブスク側の部分) | 高:定期取得 | 日常的な長期利用 |
| WebDAV バックアップ・復元 | 設定、サブスクリプション参照、上書き設定 | 中:手動トリガー | 機種変更、再インストール、遠隔地への保管 |
| 手動での書き出し・読み込み | 個別の設定ファイル | 低:すべて手動 | 一度きりの移行、一時的な共有 |
デバイス数と変更頻度で選ぶ:
- 1〜2台で、ルール変更もほとんどない場合:サブスクリプション配信だけで十分です。
- デバイスが多く、カスタムルールも多い場合:サブスク側でのルールマージを基本とし、WebDAV の定期バックアップで保険をかけましょう。
- 一時的に他の人に設定を渡す場合:手動での書き出しなら10分程度で完了します。
3つの方法は互いに排他的ではありません。よくある組み合わせは、日常運用はサブスクリプション配信、保険は WebDAV バックアップ、緊急時は手動書き出しという構成です。
同期時に気をつけたい3つのセキュリティポイント
- サブスクリプションURLはアカウント情報と同等です。URLにはサービス提供元の識別情報や個人トークンが含まれているため、スクリーンショットやグループチャット、公開リポジトリに完全なURLを載せないでください。
- 書き出した yaml にはノードのサーバーアドレスや認証情報が含まれます。信頼できる手段でのみ転送し、使用後は削除し、共有PCには残さないようにしましょう。
- WebDAV アカウントは別に用意する。設定バックアップ専用のアカウントまたはアプリパスワードを使い、メインアカウントと分離しておくことで、漏えい時の影響範囲を最小限にできます。
マルチデバイス同期の本質はファイルの移動そのものではなく、「どこを正とするか」を決めることです。サブスク側がノードを管理し、バックアップが全体をカバーし、手動書き出しが緊急時を担う。この3層がそれぞれの役割を果たしていれば、設定が混乱することはありません。